MM21 BLOGS
2019.01.15

みなとみらいとともに歩む「帆船日本丸」、横浜港の歴史と役割を伝える「横浜みなと博物館」(2)

帆船日本丸の横に位置する「横浜みなと博物館」。帆船日本丸と合わせて観覧する人が多く、生徒・学生や市民に親しまれ、観光客も多く訪れる、横浜港や海事を扱う貴重な博物館です。

「横浜みなと博物館」の前身、「横浜マリタイムミュージアム」の頃から企画・運営について携わっている志澤様に、「横浜みなと博物館」について今回お話しをお伺いしました。

「横浜マリタイムミュージアム」から「横浜みなと博物館」へ
横浜開港130周年の1989年3月に「横浜マリタイムミュージアム」は開館しました。館内には、横浜港の歴史や造船、航海、船の変遷などについて展示していました。海事について幅広く扱った博物館でしたが、横浜港の展示は多くありませんでした。開館から20年経つと、ひとつひとつは重要ですが、まとまり感にうすく、展示の老朽化が目立ってきました。そこで展示をリニューアルすることになり、2008年9月に一旦閉館し、2009年4月に「横浜みなと博物館」として生まれ変わりました。名称も分かりにくかったマリタイムミュージアムを展示内容に合わせて改めました。港湾局の施設ということもあり、「横浜みなと博物館」は、横浜港のことを市民や観光客に知ってもらうために横浜港に特化した博物館になりました。

「館内の様子」

リニューアルして、内容もすっきりしわかりやすくなったと思います。横浜港の歴史と仕組・役割について、時間軸を縦(通史展示)と横(テーマ展示)に分け展開しています。人によっては、「横浜マリタイムミュージアム」の方が世界に広がっていくイメージがあったが、歴史の博物館になってしまったという意見もありますが、大半のお客様にはわかりやすいと好評です。ただ、施設の構造上、場所がわかりにくく、目の前まできて博物館はどこ?との問い合わせもあります。

「横浜みなと博物館」ならではの楽しみ方
「横浜みなと博物館」になってから、初めてボランティアを導入しました。展示案内ボランティアがお客様をご案内していますが、ただ見るより、説明が一言あるだけで、あっ、そうかとわかることがあります。それから、船に親しみを持ってもらうために土曜日は船の折り紙教室、日曜日は帆船日本丸、黒船、赤レンガ倉庫のペーパークラフト教室も開催していてます。入館した方は誰でも参加することができます。キットはミュージアムショップで200円で販売もしています。小さいお子さまでも教育活動ボランティアが手伝いながら、完成させて、喜んで持ち帰ってくれています。博物館の魅力を発信してくれる市民のボランティアの導入は大きな出来事でした。

「横浜みなと博物館提供」


「横浜みなと博物館提供」

実際の船の操縦を体験できるリアルなシミュレーター
操船シミュレーターは、「横浜マリタイムミュージアム」の時からありますが、今の方がよりリアルにできています。もともと船員の研修用に開発されたシミュレーターを博物館向けに直して貰いました。シミュレーターでは、大さん橋からぷかりさん橋を行ったり来たりできます。周辺の風景も山下公園、みなとみらいだったり、昼間、夕方、夜、晴れと雨と嵐、上空から見たり、そういった状況が選択できます。シミュレーターは鉄道など他の博物館にもありますが、当館のはおすすめです。嵐のモードにすると本当に揺れている気分になります。

「横浜港操船シミュレーター」

大さん橋創建時の「鉄杭」を現物保存
当館でめずらしいものといえば、大さん橋の「鉄杭」です。大さん橋は桟橋構造なので、海底に鉄杭を何百本と立ててその上に床板を貼っていました。鉄杭を使った最初の大さん橋は明治27年に完成しましたが、関東大震災で壊れてしまいました。鉄杭は、2002年12月にリニューアルオープンした現在の大さん橋整備工事で全部抜いています。大半は処分してしまいましたが、いくつかは残っていて、大さん橋の手前や、日本丸メモリアルパークにもあります。しかし創建時の杭は館内に展示してあるものだけです。鋳鉄製、中は空洞で太く直径30㎝以上はあります。横浜港の最初の築港工事の証人みたいなものです。イギリス製です。

「鉄杭」

鉄杭だけでなく、松杭も使われていた?
新港ふ頭に建設する第二次築港工事の時に、大さん橋が拡張されました。鉄杭の両側を鉄筋コンクリートを入れた4連結の円筒溝で補強しました。コンクリートの基礎杭として、松杭を沢山打ち込んでいます。1989年からの大さん橋整備工事の時、この松杭も引き抜きました。松杭は、今はいくつかベンチになったりしています。当館や大さん橋入口にあります。木は切った後、海中に埋めておけば同じ年(樹齢)だけ生きるんです。水の中にいれば腐りません。ですから当館の松杭ベンチは、しばらくするとヤニがでてきました。

大さん橋手前に設置してある「松杭のベンチ」

時代とともに変わっていく横浜港
港も時代とともに変わっていかないと生き残れません。変わらざるを得ないのです。世界の海運状況、物流、工業などの進展に合わせて変わっていかないと港も取り残されてしまいます。客船がまさにそうで、昔は、横浜と神戸は必ず世界一周客船の寄港地となっていました。1980年代後半になると、他の港も、例えば、東京、大阪、鹿児島などが客船の誘致運動を始めます。そうなると横浜だから必ず寄港するということにはなりません。定期航路客船の時代から、不定期のクルーズ船の時代になっていました。

「国際競争力のある港へ  展示パネル」

クルーズ船は1970年代にカリブ海で発展しました。カリブ海、地中海、アラスカなど決まったエリアを回ります。世界一周のクルーズ船は世界全体でみれば数パーセントにすぎません。一方でアジアのクルーズマーケットは急成長しています。現在は飛鳥Ⅱとプリンセスクルーズが横浜港を拠点にしています。寄港数は数年前まで横浜市が1位でした。それが一瞬にして博多港に抜かれて、沖縄が2位になっています。現在、横浜港は3位になっています。それは主に中国からのクルーズが多いからなのです。そのような状況なので、横浜市はポートセールスのために欧米の船会社へ行ったり、貨物に関しても大きな船会社へ行ったりしています。

「クルーズ客船  展示パネル」

海運の主力はコンテナ船です。船の流れは大型化、それにあわせて港も大型化しなくてはいけません。横浜港は貿易額では日本3位です。東京が1位、名古屋が2位です。東京港は大人口を抱えているので、輸入港として適しています。このような港の現況についても、展示しています。横浜港の新しい情報については適宜変更しています。また、館内にはライブラリーがあり、図書や雑誌などを収集し公開しています。現在の蔵書数は24,000冊あり、海事系の図書館としては日本有数だと思います。詳しく知りたい方はご利用ください。

「ライブラリー」

所蔵品や資料を活用して館内では企画展も開催
企画展については、年2、3回開催しています。12月上旬まで「絵本でたのしむ 海と船」を開催していました。絵本から見る海と船ということで、お子さまから大人まで楽しめる展覧会でした。
次は、みなとみらいにある旧横浜船渠のドックの歴史と果たしてきた役割を紹介する「横浜船渠 ドック物語」を2月2日から開催します。企画展は横浜港に関するものと、もっと広い視点で、地域を越えたものとバランスをとりながら企画しています。

今後の横浜みなと博物館について希望、想い
横浜港の資料をもっと蓄積していきたいと思います。博物館は資料をもとに活動しています。集めて、整理して、使えるようにして、残すことが大事です。資料の充実活用と、資料をもとに作る展覧会、そして出版化。こうしたことをもっと充実させる必要があると思います。

2018年3月27日 「柳原良平アートミュージアム」OPEN
ご遺族からの作品寄贈を受けて、2018年に柳原良平のアートミュージアムが館内に出来ました。今後、柳原良平の研究を進めていく必要があります。デザイン史、美術史での研究はまだまだです。柳原良平という人の仕事を評価して、研究してほしいので、その拠点になればいいなと思っています。合わせて、資料を集め、魅力をもっと伝えていきたいと思います。市民からの作品の寄贈もあり、収集と研究の拠点になればいいと思います。柳原良平の知名度は全国区です。来館者にはアンケートでも、半分は県外の方、北海道、東京、埼玉、神戸、色々なところから来ていただいています。広報活動は全国的に展開し、より多くのお客様を呼び込みたいと考えています。

柳原良平と横浜の縁
柳原良平はアンクルトリスというウイスキーのキャラクターの絵で有名ですね。27歳くらいの若い時の作品です。もともとは東京生まれで、京都に引っ越して、関西にずっと住んでいました。大学も京都、入社したサントリーも大阪です。24歳まで関西にいましたが、サントリーが東京支店をつくることになり東京に戻ってきました。それからは、こどもの頃から船好きなので、船を毎日見ていたいと色々さがして1964年5月に山手へ移り住むことになります。当館の前身の横浜海洋博物館の応援団でもありました。

「アンクルトリスと柳原良平」

柳原良平は「みなとみらい21」の命名者のひとり!
柳原良平はみなとみらい21の名称募集の時に審査員のひとりでした。事務局が名称をピックアップしていましたが、いまいち良いものがありませんでした。そこで落選したものの中から再度選んでいいということだったので、そこから「みなとみらい21」を探し強く推薦したのが柳原良平です。これだけ親しまれている名称が敗者復活だったとは驚きですね。命名者であり、みなとみらい21の功労者のひとりでもあります。そういった経緯からも柳原良平は、みなとみらい21に思い入れがあるんです。みなとみらい21にある横浜みなと博物館に、柳原良平のアートミュージアムが出来たことは、運命を感じますね。

「横浜市の名称募集のポスター」

 

 

SPOT INFO

横浜みなと博物館

日本丸メモリアルパークにある横浜みなと博物館は、開港からおよそ150年の中で「横浜港」が積み上げてきた歴史や、横浜港の仕組と役割を紹介しています。「横浜港」をテーマにした初めての博物館です。
「歴史と暮らしのなかの横浜港」をメインテーマに、150年の歴史を紹介する「横浜港の歴史」ゾーンと、横浜港の役割をテーマ別に学べる「横浜港の再発見」ゾーンで構成された常設展示。
こどもから大人まで、横浜港のことが楽しく学べる博物館となっています。

  • ショップ・スポット名
    横浜みなと博物館
  • 住所
    神奈川県横浜市西区みなとみらい2-1-1
  • 電話
    045-221-0280
  • 営業時間
    10:00〜17:00(入館は16:30まで) 休館日:月曜日(祝日は開館し、翌日休館)、年末(12/29〜31)、臨時休館日
  • URL