2015.03.17

「石田尚志展、ココが見どころ!」

【ヨコハマ・アートナビ×mireaインタビューコラボ企画】
3/28(土)〜5/31(日)の間、横浜美術館で開催される「石田尚志 渦まく光」展。mireaでは開催に先掛けて注目すべきポイントを、横浜美術館学芸員の大澤紗蓉子さんにお聞きしました。事前に頭に入れておくと、展覧会がより楽しめるはず!

編集部(以下、編集)__石田尚志(いしだたかし)さんの、初の大規模個展ということですが、今回はどんな展示になりますか?
大澤__石田さんは、画家であり、映像作家であり、その2つの肩書きをもった作家さんであるというのがひとつの特徴です。1990年頃から作家として活動をされてきましたが、今回は、そこから今日まで約20年にわたって創作された作品を総覧するような展示内容になっています。過去に東京都写真美術館や東京都現代美術館、国立新美術館などでも展示がありましたが、その時々の新作で構成されることが多かったので、石田さんの活動をまとめて鑑賞できるということは今回非常に大きなポイントだと思っています。

石田尚志 渦まく光
Billowing Light:ISHIDA Takashi
会期:2015年3月28日(土)〜5月31日(日)
休館日:木曜日
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
観覧料:大人¥1,500、大学・高校生¥900、中学生¥600、小学生以下無料
※4月4日(土)は無料
※障がい者手帳をお持ちの方と介護の方(1名)無料
※毎週土曜日は高校生以下無料(要生徒手帳・学生証)
お問合せ:横浜美術館045-221-0300
【特設サイト】
http://yokohama.art.museum/special/2014/ishidatakashi

編集__石田さんのこれまでの活動全体を観ることができるんですね。
大澤__そうですね。展示方法は時系列ではありませんが、石田さんの作品に共通して見られるいくつかのテーマを通して、石田さんの創作活動の全体像が浮かび上がるようにしたいと思っています。

編集__展示内容は、4つのテーマに分かれて構成されるということですが。
大澤__「絵巻」「音楽」「身体」「部屋と窓」という4つのキーワードをもとに、石田さんの創作を紐解いていくという構成になっています。まず、第1章のテーマ「絵巻」では、石田さんが多くの作品で用いる「ドローイング・アニメーション」という手法で創られた作品をご覧いただきます。“線を描いては撮影し、描いては撮影し”という行為を繰り返しながら制作された、絵画でもあり、アニメーションでもあるという作品群です。


《海坂の絵巻》2007年/ビデオインスタレーション
(横須賀美術館での展示風景、2007年)
©Takashi Ishida

編集__この《海坂の絵巻》はどうなっているんでしょうか。
大澤__“線を描いてはカメラのシャッターを押す”ということを繰り返して制作された映像と、その原画である絵巻で構成された作品です。下に長く伸びた絵巻は墨を使って9メートルも描かれ続けた線の波で、写真の奥に見えるのはその線をコマ撮りしたカットをひとつひとつ繋げて作られた映像です。絵巻に描かれた線はもちろんもう動かないわけですが、映像の中では流れるように線がぐんぐん伸びていくんですよ。その不思議な線の動きの効果もあって、ずっと見入ってしまう、そんな作品です。

編集__まるで絵が生まれる瞬間に立ち合っているようですね。第2章のテーマには「音楽」とありますが、石田さんは音楽を聴きながら創作されるんですか?


《フーガの技法》(原画)2001年/インク・鉛筆、紙
©Takashi Ishida

大澤__音楽を聴きながら創作されることは多いようです。たとえば、こちらの作品は、タイトルからもお分かりになると思いますがJ. S. バッハの「フーガの技法」から生まれた作品です。音楽そのものが絵画のテーマになっているんです。

編集__石田さんのご実家は音楽家一家なんですよね。
大澤__そうなんです。お父様が音楽評論家、お母様が声楽家、さらに弟さんも音楽家でいらっしゃるんです。その中でひとり、石田さんご本人は絵を描くことで音楽を体現されてきた方なので、それがどのように作品に影響してきているのかを探りながら鑑賞するのも面白いと思います。

大澤__第3章のテーマは「身体」です。石田さんは第1章の「絵巻」もそうですが、いかに自分が絵を“描き続けることができるか”ということをずっと意識されています。そういう意味で石田さんにとって“パフォーマンス”というものは、作品づくりにおいて欠かせない要素になっています。


《海中道路(行き・帰り)》2011年/ビデオ
©Takashi Ishida

大澤__今回出品される石田さんの映像作品《浜の絵》、《海中道路(行き・帰り)》という作品は、2011年に石田さんが沖縄を舞台に、現地の知り合いの方たちと一緒に制作されたものです。沖縄の海水を噴霧器に入れ、それを使って道路や砂に絵を描いていくという…。まさに、「身体」全体を動かして描くことをテーマにした作品なんです。

編集__これ、海水で描いていらっしゃるんですか!?
大澤__そうなんです。だから一瞬にして描いた線は消えていってしまうのですが、ご本人の中では「身体」を動かして線を描くことが大きなポイントなので消えてしまってもいいんだそうです。

編集__何か完成した作品をつくるというよりも、石田さんにとっては描くこと自体が作品なんですね。
大澤__ご本人もそのようにおっしゃっています。特に完成形など決めず、描いていく中で、いろんなことに気づいて、その都度変更を加えたり、もっと深めたり…いろんなことを発見しながら描いていくことが大切だと。

編集__ちなみに、大澤さんご自身が個人的に好きな作品は?
大澤__どの作品も素敵なので、難しいですね(笑)。でもあえて挙げるとしたら…今回、新作が凄くいいです!この個展に向けて3つの新作を発表していただくのですが、そのうちの1つはチラシやポスターにもなっている《光の落ちる場所》という作品です。


《光の落ちる場所》2015年/ビデオ
©Takashi Ishida

大澤__この作品は、2014年の夏に、石田さんがご自身のアトリエに大きなカンヴァスを設置し、色とりどりの線を描いては撮影を繰り返すことで作られた映像作品です。今回はその映像と、映像の中に映っている実際のカンヴァスが一緒に並んで展示される予定です。

編集__見応えありそうですね。それらが最後の第4章のテーマ「部屋と窓」にあたるんですね。
大澤__はい。椅子や机といったオブジェが配された室内の壁や床に、石田さんが描いたドローイングが展開する映像作品がご覧いただけます。横浜美術館の大きな展示室の空間全体とともに、ダイナミックに展示される作品を楽しんでいただけたらと思っています。

また、石田さんは2006年11月から2007年1月まで、横浜美術館内で滞在制作を行っていたんです。その中で完成した作品がこの《海の壁―生成する庭》という作品です。


《海の壁―生成する庭》2007年/ビデオインスタレーション
(東京都現代美術館での展示風景、2011年)
©Takashi Ishida Photo:Haruyuki Shirai

大澤__この作品は、横浜美術館の中に大がかりなセットを作って制作されました。この作品から、石田さんの映像はひとつの画面だけではなく、画面が複数になり、映像の中には実像と虚像が混じるなど、どんどん要素が複雑になっていくんですね。そういう意味でもこの作品は、石田さんのキャリアの中でターニングポイントになったものといわれています。

編集__横浜美術館で過ごした時間が作品の変化に大きく影響していると…。
大澤__それまでは本当に一人で自分自身と向き合いながら作品を描いてこられたせいか、石田さんの作品はどこか内向的で、神秘的なニュアンスを感じさせるものが多かったんです。そんな中、短期間とはいえ、常に人が往来している美術館という空間で作品を作り続けた時間は、石田さんにとってとても貴重なものだったそうです。それ以降、石田さんの作品は本当に外へ外へと広がっていくような…そんなイメージに変わってきています。この作品は最後の第4章に位置づけられますが、今回の展示では、美術館に入ってすぐのグランドギャラリーという大きな吹き抜けの空間に展示されます。


《燃える椅子》2013年/ビデオ
©Takashi Ishida

大澤__それから、展覧会のタイトルにもなっている《渦巻く光》という新作も登場します。石田さんが長年あたためてきた構想が、やっと形になったんですよ。正方形のガラス板を少しずつ回転させながらドローイングを続け、それを撮りためたものが映像作品になりました。光が明滅しているみたいに色が現れては消え、線もくるくると動き、まさに「渦巻く世界」なんです。これは会場で観てのお楽しみということで(笑)。

編集__映像にすることで色だけではなく光も取り込めるのですね。絵画とはまた違った世界が楽しめそうです。
大澤__そうですね。映像にすることで時間の流れを感じられたり、光の美しさも感じとることができます。今回は本当にずーっと見ていたくなる、そんな映像作品ばかりですよ。たとえば、いい映画ってずっと引き込まれちゃうじゃないですか?そんな風に、これらの映像作品も楽しんでいただけたらと思います。作品がもつ世界観をより深く感じていただくために、展示室ひとつひとつの空間づくりも大切にしていきます。

編集__「描く」こと一つをとっても、これだけたくさんの表現に触れることができるのですね。数々のイベントも開催されるようで今から楽しみです。今日は色々お聞かせいただき、ありがとうございました。

CHECK! CHECK!
5/5(火・祝)
線描で奏でる!一期一会のパフォーマンス
ライブドローイング「横浜絵巻」 美術館前広場で

《海の壁―生成する庭》制作風景(横浜美術館、2006年)
©Takashi Ishida

美術館前広場での石田さんのライブドローイングに、現代美術界で人気の高い画家、O JUNさんと小林正人さんという2人のビッグネームの「参戦」が決定!この3人の画家による予測不可能な競演のゆくえを、この目で見届けよう。
日時:2015年5月5日(火・祝)14:00〜15:00
場所:横浜美術館前広場(雨天寺は美術館正面ポルティコ)
料金:無料(申込不要)

【今回お話を伺った方】

横浜美術館 学芸員 大澤紗蓉子さん

SPOT INFO

横浜美術館

横浜美術館は、1989年11月3日に開館しました。
迫力のあるシンメトリーな外観と、吹き抜けの開放的なグランドギャラリーが特徴の当館は、7つの展示室のほか、11万冊を超える蔵書がある美術情報センター、多彩なワークショップを行うアトリエなども揃う、国内でも有数の規模を誇る美術館です。 国際的な港町、横浜にふさわしい美術館として、開港以降の近・現代美術を幅広く鑑賞していただけるほか、年間を通じて、約1万2千点の所蔵品からテーマごとに展示を行うコレクション展、多彩な企画展を開催しています。

  • ショップ・スポット名
    横浜美術館
  • 住所
    神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1

    横浜美術館
  • 電話
    045-221-0300
  • 営業時間
    10:00〜18:00(入館は17:30まで) 木曜および年末年始は閉館
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