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取材記事

【取材記事】ツタンカーメン王の物語へと。
「MYSTERY OF TUTANKHAMEN/ミステリー・オブ・ツタンカーメン~体感型古代エジプト展~」開催中

古代エジプトに生きた、ツタンカーメン王にまつわる遺品を精巧に再現した「超複製品(スーパーレプリカ)」約130点を展示する「MYSTERY OF TUTANKHAMEN/ミステリー・オブ・ツタンカーメン~体感型古代エジプト展~」が、ツタンカーメン・ミュージアム(横浜みなとみらい PLOT48)で開催されています。数々の精緻な複製品や最新技術を駆使した展示が、約3,300年前のエジプトに迷い込んだような歴史の旅に誘います。

「MYSTERY OF TUTANKHAMEN/ミステリー・オブ・ツタンカーメン~体感型古代エジプト展~」は、エジプト考古学者で名古屋大学デジタル人文社会科学研究推進センター 教授の河江肖剰(ゆきのり)氏の監修のもと、2024年12月13日に開幕しました。

世界に3セットしかないという、約130点のツタンカーメンの副葬品のスーパーレプリカを展示しています。これらは、エジプトのミニア大学美術学部の彫刻学の教授のもと、3年がかりでエジプトで制作されたものです。

精巧な複製品とデジタル映像、再現された王墓の玄室などによって、壮大な想像を巡らせる展示となっています。

MYSTERY OF TUTANKHAMEN/ミステリー・オブ・ツタンカーメン~体感型古代エジプト展~への入り口

空間デザインは、映画「ALWAYS三丁目の夕日」「永遠の0」「ゴジラー1.0」で日本アカデミー賞最優秀美術賞を3度受賞した美術監督の上條安里氏が担当。
さらにアートデレクターは、世界で初めてギザの3大プラミッドの3Dデータの計測などを行った市川泰雅氏が担当。カイロ・エジプト博物館へ出向き、実際のツタンカーメンの黄金のマスクや玉座など数々の遺物を自らスキャニングして、3Dデータを製作されました。

旧アンパンマンミュージアムの3階建ての空間が今回、神秘的な体感型展示へと大きな変貌を遂げました。

今回は、ツタンカーメン・ミュージアムの館長 我妻さんと広報 齋藤さんに展示の楽しみ方を伺ってきました。

場所は、(株)村田製作所、神奈川大学みなとみらいキャンパスのある交差点からすぐ。
みなとみらい線新高島駅2番出口より徒歩7分、みなとみらい駅3番出口より徒歩10分

スーパーレプリカだからこそできる展示を体感

ツタンカーメンは9歳で父を亡くして王位を継承し、19歳の若さで生涯を閉じたと言われています。いまだ研究者の間でも多くの謎に包まれているという若き王の生涯。

今回は、現地から門外不出となっている遺品の現物にかわり、スーパーレプリカによって、ツタンカーメン王の生きた時代に迫ります。「レプリカでなければ絶対にできない展示」と監修の河江さんが語るように、レプリカならではの展示方法をこの展覧会では実現しています。
また、我妻館長は「ここは3階建ての広い美術館であり、物語を死生観から見せられるのはここならではです」と話します。

MYSTERY OF TUTANKHAMEN/ミステリー・オブ・ツタンカーメン~体感型古代エジプト展~
館長 我妻正敏さん(左)
広報 齋藤真由美さん(右)

それでは、展示に出かけましょう。
まずは、1Fのスクリーンに映し出されたオープニングムービーから。迫力ある映像でギザのピラピッド群に降り立ったような臨場感に包まれ、高揚感を感じながらエレベーターで3階の展示室へと向かいます。
エレベーターを降りるとそこから、古代エジプトへの旅の始まりです。

オープニングムービーで、展示の概要を知ることができます

会場は、「古代エジプトの死生観とミイラ」「古代の神聖な文字ヒエログリフ」「ツタンカーメンの日常」「古代エジプトの信仰」「ツタンカーメンの棺」「ツタンカーメンのマスク」「ツタンカーメン王墓」の7章からなります。

「古代エジプトの死生観とミイラ」の章では、古代エジプト人が死をどのように捉えていたのかにふれられる展示内容となっています。

死者は来世で生き続けると考えられ、古代エジプトの埋葬には死者のミイラ化がなされます。ツタンカーメンの二人の娘のミイラや、ミイラが収められていた金張の人形棺、死者が来世で働くかなくてもよいように仕える「シャブディ」の人形もずらりと並びます。

【ミイラが収められていた人型棺など】古代エジプト人は、体そのものが再生・復活に必要と考え、ミイラとして保存していた
「シャブディ」は、死後の世界での労働を代行し奉仕するとされていた

驚くべきは、ツタンカーメンが身につけていた護符の数々です。
ツタンカーメンのミイラが発見された時、17層の包帯で包まれ、その間に140点を超える護符がぎっしりと付けられていたのだそう。ハゲワシやハヤブサといった動物をかたどった襟飾りや王冠、首飾りのほか、金製のサンダルに短剣など、きらびやかでうっとりするほどの美しさですが、これほどのものを全身にまとうことは生身では想像し難いほど。

「展示では、透明のアクリル板を何層も使い、実際にどのようにまとっていたかを再現しています。レプリカだからできる展示手法ですね」と我妻館長は話します。

「護符」を身につけていた様子が一目でわかる展示になっている
発見者のハワード・カーターが発見時に描いた精緻なスケッチのコピーも

ツタンカーメン王の生活に思いをはせる

 3階のもう一つの見どころは「ツタンカーメンの日常」をテーマにしたコーナーです。
ツタンカーメンの部屋を想像して再現した空間が広がります。

ツタンカーメンの日常を感じられる部屋

ツタンカーメンの王墓からは、葬送儀礼にかかわるものだけでなく、使用していた日用品も多く埋葬されていました。

黄金の玉座や柄に細工の施された杖、ペンダントや首飾り、胸飾りといった装飾品の数々…。模様が描かれた腰掛けやライオン型の軟膏入れ、ザクロ型の銀製容器、透かし彫のある木製椅子などが、博物館のように一堂に会します。
意匠はまったく古びることなく、3300年前のものとはとても思えないデザイン性の高さに驚かされます。

【偽の折りたたみ式の腰掛け】
調度品の数々に目を奪われる
王座に杖を添えた展示もスーパーレプリカならでは。細かな装飾も見どころ

玉座のそばに置かれた杖からは、ツタンカーメンが支えにしていたのであろうかという想像をしたり、ツタンカーメンと彼に香油を塗る妻の姿が描かれた玉座から、ツタンカーメンの結婚生活に思いをはせたり。

広報担当の齋藤さんはこう話します。
「日常の空間では、ツタンカーメンの人間味が感じられます。従来のツタンカーメンの若くして亡くなった悲劇の少年王というイメージを離れて、彼の王姫との関係性や使われていた調度品などを通して、彼の人生が垣間見えるような展示を楽しんでいただきたいです」

古代の神聖な文字「ヒエログリフ」を読み解くための展示。
この後、ヒエログリフがたくさん出てくるので要check!

門外不出の黄金のマスクや棺のスーパーレプリカ

2階に降りていくと、息をのむ光景が広がります。
ずらりと一列に並ぶ黄金の棺と厨子。3つの金箔の厨子と、金箔の人型棺2基に純金製の人型棺1基。これらは、ツタンカーメンのミイラが入れ子構造で重ねられていた8重のうちの一部です。
大きさの順に並ぶ棺と厨子は、その重厚さと多重構造が一目で伝わる展示になっています。

入れ子構造の「棺と厨子(棺3基、厨子3体)」が一列に並ぶ
ミイラが収められていた黄金の棺3基。
壁面では古代エジプトの世界に誘う映像も

棺と厨子にはみっちりと模様や文字(ヒエログリフ)が施されています。
頭部のてっぺんから足の裏側まで、四方八方からその様子を間近に見られるのも、スーパーレプリカならではの楽しみ方。

棺と厨子の奥では、最新のデジタル技術を駆使したイメージ映像を視聴できます。
発掘された遺品をスキャンしたデータをもとにしたデジタル映像で、100年あまり前に出土した品々の詳細を、5台のプロジェクターと3つの大型スクリーンにより迫力の映像で伝えています。

このフロアには黄金のマスクも展示され、これらの現物は現在は門外不出となっています。
何の囲いもない状態で、肉眼で細部まで見られる機会は見逃せません。

「マスクの内側にもヒエログリフが描かれているんですよ」と我妻館長が教えてくれました。

【黄金のマスク】(正面)
囲いもなく間近に見られるのはレプリカならでは!
【黄金のマスク】(裏面)
マスクの裏側や内側などもよく見てみてみよう

カビまで再現した玄室の中へと

【ツタンカーメン王墓 全体の様子】
別空間に足を踏み入れたよう

1階へ降りていくと、いよいよ最後のフロアです。
ここに現れるのは、王墓がそのまま移築されたかのような玄室です。

ほぼ原寸大で再現されたこの空間は、アートディレクター市川氏が製作した3Dデータをもとに、美術監督上條氏のチームによって精緻に制作されました。
古来の職人の筆使いから、壁や天井にあらわれるカビやしみまでも忠実に表現しており、まるで実際の王墓の中に入っているかのような感覚を覚えます。

ひやりとした空気感まで伝わってくる
玄室の壁画も見応え十分

ツタンカーメン王墓は、1922年にハワード・カーターによって発見されました。
歳月をかけ、難航した調査の末に見つかったこの王墓。この空間に、展覧会に展示されているような、黄金にきらめく数々の遺品が埋められていたのです。発見当時の興奮がいかほどだったか、想像するだけで目がくらむよう。そんな世紀の発見の一片を想像させるようなロマン感じる空間です。

部屋を出て、展覧会を後にするとき、古代エジプトにトリップしてきたかのような不思議な感覚が残ることでしょう。

子どもたちの感受性を広げたい

「子どもから大人まで幅広い世代の方に楽しんでいただける展示になっています。たくさんのお子さんたちに来ていただき、展示で古代の歴史を体感しながら感受性を広げてほしいです。芸術、文化、教育のコンテンツとして、このみなとみらいの施設の皆さんと連携しながらにぎわいづくりに貢献できれば」と我妻館長が力を込めました。

長期にわたる展示となり、期間中にワークショップなども企画していく予定だそうです。

何度訪れても、新しい発見に満ちた展示となるはず。
古代エジプト、そしてツタンカーメンの人生へと旅に出かけてみませんか。

エジプト考古学者
名古屋大学 デジタル人文社会科学研究推進センター 教授
河江肖剰(ゆきのり)氏

今回の展示の見どころは、本物ではありえない、レプリカでないと絶対にできない方法で展示をしているところです。
ツタンカーメン王のミイラが実際に身につけていた遺物とお墓である玄室が一堂に見られる貴重な機会です。

レプリカならではの楽しみ方をここでしていただいたうえで、ぜひ本物を見にエジプトを訪れてみてください。


##infomation
MYSTERY OF TUTANKHAMEN/ミステリー・オブ・ツタンカーメン~体感型古代エジプト展~
●会期:2024年12月13日~2025年12月25日
●会場:ツタンカーメン・ミュージアム【PLOT48】
(横浜市西区みなとみらい4-3-1)
●開館時間/11時~18時 
※最終入館は閉館の30分前まで
※再入場はできません
●休館日/火曜
※休館日、開館時間は変更となる場合があります。最新情報は公式サイトで随時更新。
●主催/合同会社ツタンカーメンプロジェクト
https://tutankhamen.jp

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