【取材記事】乗って体感!船での暮らしと歴史
国重要文化財『帆船日本丸』と『第一号ドック』を訪ねて
横浜・みなとみらいに浮かぶ帆船日本丸(はんせんにっぽんまる)。その船を抱えるように残る明治の遺構・第一号ドック。
その両方が、船と港町・横浜の歴史を今に伝える国の重要文化財です。
練習帆船として多くの実習生を乗せ、船員を育ててきた帆船日本丸と第一号ドックの魅力を取材しました。
みなとみらいのシンボル・帆船日本丸は多くの船員を育ててきた船!
帆船日本丸は、1930(昭和5)年に建造された練習帆船。
2030年には、なんと船齢100歳を迎えます。
船員を目指す学生たちが実習生として乗り込み、主に太平洋を舞台に訓練航海を重ねました。
ハワイやサンフランシスコ、シアトルなどを訪れ、日米修好通商百年を記念した遠洋航海でニューヨークまで航海したこともあったそう。
1984(昭和59)年に現役を引退するまで、約1万1,500人の船員を育て、日本の海運、そして社会を支えてきました。
「帆船というのは、風の力を受けて動かすので、海の自然を知ることができます。また、みんなで協力して帆を広げることで協調性を養います」と島宗さん。
練習帆船としての役目を終えてからは、全国10都市から誘致の声が上がる中、
横浜市民83万人の署名を集め、現在の第一号ドックに係留保存されることが決まりました。

業務推進課長補佐兼学芸課長補佐 島宗美知子さん(左)
業務推進課長補佐 和田由紀夫さん(右)
今も受け継がれる、帆船日本丸の「総帆展帆」
現在も帆船日本丸では、29枚すべての帆を広げる「総帆展帆(そうはんてんぱん)」が定期的に開催されています。
風を受けて帆で海を進むーーー。
その驚きが、多くの人たちの好奇心も引き出してくれるはずです。
日本丸には、「展帆ボランティア」のほか、船内の整備等を行う「甲板ボランティア」、見学客にガイドをする「ガイドボランティア」と、たくさんのボランティアのみなさんが活躍されています。

明治の遺構・第一号ドック
そんな帆船日本丸を現在受け止めているのが、1898(明治31)年に竣工した旧横浜船渠株式会社第一号ドックです。
船の修繕や検査を行うドックは港に欠かせない施設。
今の高層ビルが並ぶみなとみらいからは想像しにくいですが、かつてこの一帯には造船所がありました。
「造船業は総合組立産業と呼ばれることもあり、関わる人がすごく多い。街がにぎわうきっかけにもなっていたんです」と島宗さんは話します。
第一号ドックに使われている石積みも、ぜひ注目したいところ。明治時代の技術と職人の仕事を感じることができます。

今なお美しく磨き込まれた船内へ!
帆船日本丸の船内は一般公開されており、入館料(大人400円、小中高校生200円)で船内の見学ができます。
「船に入れることは意外と知られていないので、ぜひ乗って、船や生活を感じ取って、船に親しむきっかけになってほしいですね」と島宗さん。
わくわくした気持ちでいざ乗船!
階段を上がって船に入ると、建造から100年近く経っているとは思えないほどの状態のよさに驚きました。
国の重要文化財を、これほど間近で見て、実際に船内を歩いて体感できるのも帆船日本丸の魅力です。
船内の機材、備品は現役当時のものが残され、クラシカルな雰囲気が漂います。
帆船日本丸は現在も、10名の乗組員が日々の整備を行い、ボランティアのみなさんによりすべての帆を広げる総帆展帆や、海洋教室が続けられています。




帆船日本丸での暮らしに思いをはせて
航海訓練は長ければ数か月にわたるので、使い終えたロープを雑巾や手芸の材料として再利用するなど、船にあるものを工夫して暮らしていました。


実習生たちの部屋や、船長室、士官サロン、医務室、その他授業が行われていた教室なども見ることができます。
船長や航海士、機関長などの幹部職員は「士官」として、部屋も個室が割り当てられていました。




ガイドボランティアさんがいらっしゃるときはお話を聞くことができるほか、部屋ごとの説明、当時の写真、当時使われていたものの説明書きなどあちこちに解説があります。
生き物になぞらえた図解もわかりやすいです。

島宗さんと和田さんに、帆船日本丸の好きなところを聞いてみました。
「船内の木製品や木部がピカピカなんですね。金属の真鍮部も。船に愛情をかけてもらっているというのを感じます。当時の学生たちも、きれいに磨かれた船内で学べることがうれしかったんじゃないかなと思います」と島宗さん。
「映画『タイタニック』に出てるみたいな、装飾を施している豪華な階段だったり、細くて急勾配の階段だったり、階段に船らしさを感じます」と和田さん。


船を降りたら、周辺にも注目!
もう1か所、日本丸メモリアルパークの芝生広場の魅力を和田さんが教えてくれました。
「港を見渡せて、すごく眺めのいいところです。お弁当を食べたり思い思いに過ごすことができますよ」
少し足を伸ばせば、横浜ランドマークタワーの足元には、国の重要文化財・旧横浜船渠第2号ドックがあり、こちらは「ドックヤードガーデン」として活用されています。精巧な石積みの技をそばで見られますよ。


「港町」として時代が重なり合うみなとみらいへ
明治時代に造られた第一号ドック、昭和に活躍した帆船日本丸、そして現代のみなとみらいの街並み。
この場所には、横浜が「港町」として発展してきた時間が重なっています。
みなとみらいを訪れたときは、横浜ランドマークタワーや海辺の景色と合わせて、船や港に積み重なる時を想像しに、帆船日本丸に足を運んでみてください。街の見え方が変わってくるかもしれません。
すぐそばには、横浜港の歴史に触れられる「横浜みなと博物館」と、その館内には、柳原良平氏の魅力がつまったアートミュージアムも。あわせて楽しんでみてください。
《帆船日本丸・横浜みなと博物館》
横浜市西区みなとみらい2-1-1
【開館時間】
10:00〜17:00(入館は16:30まで。展帆日は9:30開館)
【休館日(2026年度)】
月曜日(祝日の場合は開館、翌平日休館)
年末年始 2026年12月28日(月)~2027年1月4日(月)
メンテナンス日:2027年1月28日(木)~3月1日(月)
※作業の内容などにより変更になる場合があります。
※このほか、帆の取り外し・取り付けなどに伴う臨時休館があります。来館前に公式サイトで最新情報をご確認ください。
https://www.nippon-maru.or.jp
《総帆展帆2026スケジュール》
10月4日(日)11日(日)18日(日)
11月3日(火・祝) 15日(日)
<展帆・畳帆作業時間>
10:30~12:00頃 展帆作業
14:30~16:00頃 畳帆作業
※一部の帆の展帆となった場合は、多少時間が変わる可能性があります。
<船内見学ができる時間>
9:30~10:30
12:00頃~14:30
16:00頃~17:00
※入館受付は各見学終了時間の30分前までです。

